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寒空_6
それはまるで、一度試した事のある口振りだと思った。
「何でなのか俺にも分かんねーんだけど、ピタッと止まっちまったんだよ。因みに人間のよく言うニンニクだとか杭だとか、十字架なんてのも効かない。あんなのは保守の為に人間が勝手に作った話だ」
「でしょうね。そのレバーの味付けにニンニク使いましたから」
「アンタ、割といい性格してんな」
言われてみれば今朝も慌てて家を出て行った。つまり太陽の光も平気という訳か。
「まあだから俺は、アンタの言った不老不死ってこったな」
「…………そうですか。…………それは、死ねないというのは、とても辛いことですね」
「…………」
大きな最後の一口を平らげた彼は残っていた缶ビールの中身を一気に煽ると、空き缶の底を私の方へと突き立てた。
「アンタ、明日暇か?」
「え?ええ、これと言って予定は決めておりませんが」
「っし、じゃあ明日俺に付き合え」
「何にでしょう?」
「んなもん明日のお楽しみだよ。言ったらつまんねーだろ?さーて、次は何飲むかな」
意気揚々と袋を覗いた彼は次から次へと買ってきた酒を開け、一時間も経つ頃にはすっかりと酔い潰れてしまった。
「…………あの、大丈夫ですか?」
テーブルに突っ伏した頭に声を掛けるものの、返答は呂律が回っていない言葉で何を言っているのか聞き取れない。
仕方ない、ベッドへ運ぶか。
重い腰を上げ、昨晩彼を運んだ時と同じよう力のない腕を首元に寄せてその身体を抱える。
「んぁ……?んらよ、なんら?」
「ベッドに運びます。そんなんじゃ帰れないでしょう?」
「あんら、そんらほそいのに、ちからあんね」
「ご主人様のお世話をする内に自然と力が付きましたからね」
「ふーん…………なぁー、なまえは?」
「はい?」
「あんらの、なまえ」
そう言えば名乗っていなかった。
「ミナギです。海の凪と書いて海凪 と言います。姓は高倉、ご主人様にいただきました」
「みぃ……な、ぎ……?」
「はい。貴方の名前は……明日聞くことにしましょうか。おやすみなさいって、もう聞こえてませんかね」
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