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寒空_11

餌付けすんな、と文句を言いつつも明幸さんは私の隣へと戻ってくる。 続いて口を開けた彼に苦笑して、私は手にあったベーグルサンドを今度こそ近付けた。 「どうぞ」 「ん…………ん!んまいな!」 不服そうな表情から一変して、頬張ったベーグルサンドにご満悦な顔をする。 「ふふ」 「……んだよ?」 「いいえ、美味しそうに食べるなと思って」 「旨いからな。ほら、こっちもやるよ」 差し出された食べかけのベーグルサンド。例に倣って大口を開けて齧りついた。 「……うん、美味しいですね」 「…………」 「?」 そうだろうと返ってくると思った言葉はいつまでも耳に届かない。 「どうしました?」 「いや、何か……もっと小綺麗に食うかと思ったから」 「ああ、そう言う。貴方が美味しそうに食べるので真似てみました」 「ふーん……」 「はしたなかったですか?」 「いんや……まあ意外だったけど、悪くはなかった……多分」 「ふふ、何ですか、多分って。明幸さんって面白い人……いえ吸血鬼ですよね」 「アンタもなかなか変わってると思うけどな」 肩を竦めた私を明幸さんは横目に見て、小さく息を吐いた。 それから少し間を開けてポツリと言葉を溢す。 「――なあ、命粗末にすんなよ?」 「はい?」 「アンタさ、死にてぇと思ってんだろ?」 「…………何です、突然?」 一瞬、言葉を失ったのは内心を見透かされたと思ったからだ。吸血鬼には心を見透かす能力でも備わっているのだろうか。 「不老不死なんて言ったら大抵の奴は羨ましがる、普通はな。けどアンタは違ったろ?」 「……ふふ、なるほど。でも大丈夫ですよ。私は死ねませんから」 「何だよ、まさかアンタも不老不死とか言うのか?」 「まさか。そんなんじゃありませんよ。…………約束があるんです」

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