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2-雨降りパーティナイト(3)
あああぁぁ。やっちゃったなぁ……。
完全に挙動不審な変な人だったよね、俺……。
ぽけーっとした顔で城崎さん見つめて黙り込んだかと思ったら、突然顔赤くしてご飯かきこんで、逃げ出してきちゃったんだもん。
せっかく城崎さんが話しかけてくれたっていうのに。しかも笑顔で。
はぁ……でも城崎さん、笑ったところが眩しいくらい綺麗だったな……。
これは絶対テストに、いや夢に出るよ。間違いないよ。大事なトコだよ。
今夜寝るのが楽しみだな。えへ。どんな夢だろ。
城崎さんと俺が、仲良くお付き合いしてる夢だったらいいなぁ。
高望みかな? じゃあ城崎さんさえ夢に出てきてくれればいいよ。
それだけで俺は充分に幸せだもーん……へへ。
「しっ、しろやん!? しろやん、ちょっと!」
早くも幸せに包まれてふわふわ廊下を歩いていたら、ぐいと腕を掴まれて、端に引っぱられた。
「しろやん大丈夫? 顔赤いしふらふらしてるし、熱? 熱ある?」
「あは。灰谷久しぶりぃ」
「何言ってんの、エントランスとかエレベーターで俺達結構遭ってるよ! それともなに? もしかして俺ってしろやんに認識されてないの!? 声かけてんのに!?」
灰谷が俺の両肩掴んでぐわんぐわん揺さぶってくる。
わあ。
「灰谷、灰谷、気持ち悪いよぉ」
揺さぶられ過ぎて酔っちゃいそう。ほら、白身魚のフライが俺の胃から脱出しようとしてる。
あ、ごめん、と言って灰谷は俺から手を離した。
「で、熱あるの?」
「ないよ。ふふ」
「そうなの? あ、きのぴーと何かあったのね」
灰谷がさとった顔をした。
灰谷は良い奴だなぁ。いまだにこんな脳ミソ半分溶けかかったような俺の心配してくれるんだもん。
あ、脳ミソ溶けかけてるのは、城崎さんの笑顔が眩しかったからだよ。太陽の下のアイスクリームみたいに、とろりと。溶けちゃったよ。
「城崎さんがね、ご飯食べに来てくれるって」
「そうそう。あ、本人から直接聞けた? 良かったね」
「うん。城崎さん綺麗だった」
俺がそう言ったら、はいはいと言うように、灰谷が苦笑しながら俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「きのぴーと話しただけでそんなふわふわになっちゃうんじゃ、一緒に食事なんてできないんじゃない? うちで食べるんでしょ? 狭いよ? 逃げ場ないよ?」
灰谷が俺の髪をくしゃくしゃにしてからかってくる。
「大丈夫だもん。やる時はやる男だよ、俺は」
「ほんとにー? あ、きのぴー」
灰谷が俺の後ろを見て唐突に名前を呼んだ。俺は反射的に飛び上がって、素早く灰谷の後ろにまわった。
食堂から城崎さんが出てくるところだった。
「こらしろやん、駄目でしょ隠れちゃ」
「や、これはちょっと、その、まだ心の準備が」
あはは、と笑って灰谷が城崎さんに声をかける。
えっ、ちょっと、だから心の準備ができてないんだってば!
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