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2-雨降りパーティナイト(4)
「ねえきのぴー、食事なんだけどさぁ」
城崎さんがこっちを見てにこりと笑った。
「ああ、金曜日にしませんか? ゆっくりできますし」
「そだね。そうしよ」
くすくす笑いながら、城崎さんが寄ってくる。
灰谷もそれに合わせて俺を後ろから引っ張り出そうとする。
駄目だって、灰谷。今の俺に城崎さんは無理だって。
よし、いないふりだ。俺は木……いや駄目だ、こんな食堂の出口に木は生えない。俺は自販機……お菓子も売ってるおっきい自販機……黙って働く皆の自販機……。
「しろやんてば、何照れてんの? 告白したときの勢いはどうしちゃったの?」
自販機になった俺は小声で必死に弁解した。
「だって、城崎さん、日に日に美人さんになってくんだもん」
「白田さんは大げさですね」
にゃぁあぁあー! 覗かないでー!!
ちょっとだけ顔をあげたら、城崎さんがいたずらっぽい笑顔で俺を見てた。やだ、めっちゃ可愛い。美人で、かつ可愛いってどういうこと? 両立するのはおかしくない?
「どうも。あの、さっきは急に席を立っちゃってごめんなさい」
「ふふ。大丈夫ですよ。ところで……」
「城崎!」
城崎さんが何か言いかけた時、食堂とは反対の方向から誰かが声をかけた。
城崎さんは反射的に口を閉じた。気のせいだろうか。一瞬だけ、無表情になった気がした。
しかし次の瞬間には、声をかけられた方へ再び笑顔を向けていた。
つられて俺も城崎さんと同じ方を見る。声の主は城崎さんを見据えてこちらに歩いてくるところだった。
すらりと背の高いナイスミドル。うーん、ミドルって言うにはまだちょっと若いか。
明らかに俺なんかより人生のランクが高そうな、しかも鋭い眼光がかっこいい男性だ。仕事ができる男って感じ。ちょっと、生涯収入とか言うな! 落ち込むだろ!
「おつかれさまです」
灰谷が挨拶したから、俺も慌てて合わせる。
「おつかれさま」
片方の口端を少し上げた微笑みで挨拶が返ってくる。
いやホントにかっこいいんですけど、どなたですかこの方。
彼が城崎さんと話し始めたところで、灰谷がこっそり教えてくれた。
「南副社長だよ」
ははー! 本社の人だ! 挨拶しといてよかった。
副社長は城崎さんと何か話してる。
その様子を見ていて思った。ああ、このひとも、城崎さんのこと好きなんだなって。
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