19 / 120

2-雨降りパーティナイト(4)

「ねえきのぴー、食事なんだけどさぁ」 城崎さんがこっちを見てにこりと笑った。 「ああ、金曜日にしませんか? ゆっくりできますし」 「そだね。そうしよ」 くすくす笑いながら、城崎さんが寄ってくる。 灰谷もそれに合わせて俺を後ろから引っ張り出そうとする。 駄目だって、灰谷。今の俺に城崎さんは無理だって。 よし、いないふりだ。俺は木……いや駄目だ、こんな食堂の出口に木は生えない。俺は自販機……お菓子も売ってるおっきい自販機……黙って働く皆の自販機……。 「しろやんてば、何照れてんの? 告白したときの勢いはどうしちゃったの?」 自販機になった俺は小声で必死に弁解した。 「だって、城崎さん、日に日に美人さんになってくんだもん」 「白田さんは大げさですね」 にゃぁあぁあー! 覗かないでー!! ちょっとだけ顔をあげたら、城崎さんがいたずらっぽい笑顔で俺を見てた。やだ、めっちゃ可愛い。美人で、かつ可愛いってどういうこと? 両立するのはおかしくない? 「どうも。あの、さっきは急に席を立っちゃってごめんなさい」 「ふふ。大丈夫ですよ。ところで……」 「城崎!」 城崎さんが何か言いかけた時、食堂とは反対の方向から誰かが声をかけた。 城崎さんは反射的に口を閉じた。気のせいだろうか。一瞬だけ、無表情になった気がした。 しかし次の瞬間には、声をかけられた方へ再び笑顔を向けていた。 つられて俺も城崎さんと同じ方を見る。声の主は城崎さんを見据えてこちらに歩いてくるところだった。 すらりと背の高いナイスミドル。うーん、ミドルって言うにはまだちょっと若いか。 明らかに俺なんかより人生のランクが高そうな、しかも鋭い眼光がかっこいい男性だ。仕事ができる男って感じ。ちょっと、生涯収入とか言うな! 落ち込むだろ! 「おつかれさまです」 灰谷が挨拶したから、俺も慌てて合わせる。 「おつかれさま」 片方の口端を少し上げた微笑みで挨拶が返ってくる。 いやホントにかっこいいんですけど、どなたですかこの方。 彼が城崎さんと話し始めたところで、灰谷がこっそり教えてくれた。 「南副社長だよ」 ははー! 本社の人だ! 挨拶しといてよかった。 副社長は城崎さんと何か話してる。 その様子を見ていて思った。ああ、このひとも、城崎さんのこと好きなんだなって。

ともだちにシェアしよう!