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2-雨降りパーティナイト(12)

なんとか無事に二人とも駅にたどり着いた。 怪我なく到着できたことを『無事』とするならば、の話だけど。 雨に濡れずに到着することを目指すなら、まったくもって『無事』じゃない。 「ひどいな」 城崎さんが全身の被害状況を確認して、ぽつりと零した。 「もう濡れてないところがないです」 「本当だ」 バッグから、灰谷が持たせてくれたタオルを取り出して、拭けるところを拭いた。 おかげで髪の先から水が滴らないようになったし、シャツは肌にはりつかなくなった。これなら少しマシだ。ありがとう灰谷。 「なあ、白田」 しばらく考えるような目をしていた城崎さんが、俺に声をかけた。 「はい」 「体が冷えただろ。帰る前にちょっと休憩して、コーヒーでも飲まないか」 城崎さんから思ってもみない提案だ。少しでも城崎さんと一緒にいられる時間を延ばせるなら何でも大歓迎です。 「いいですね! 温かいの飲みたいです」 駅に隣接している商業ビルへ入ってみたら、三階にカフェがあったので体が温まりそうなドリンクをオーダーした。 カップを持って外を見下ろせる窓側のカウンター席に並んで座る。 「白田。……いえ、白田さん」 カフェモカを一口飲んで、城崎さんの口調が仕事モードに戻った。 思い悩むような色を瞳に湛えて、城崎さんは俺をじっと見つめる。 「今日は、久しぶりに楽しい時間を過ごせました。ありがとう」 「い、いえ。こちらこそありがとうございました。俺はちょっと暴走しちゃって、すみません。でも楽しかったですね。またやりたいです」 城崎さんが笑顔を浮かべる。寂しそうな笑顔を。 「白田さん……。ごめんなさい。もう諦めてください。諦めて、私のことは忘れてください」 唐突に、さっき城崎さんが頭を撫でてくれたことを思い出した。ぎこちない手つきで、でも優しさは伝わってきて。 なのに。なんで。その一言が頭の中を魚のように回遊する。 なんで、城崎さんのことを諦めなきゃいけないの。 なんで、あんなに楽しかったのに、城崎さんだって楽しかったって言ってるのに、忘れなきゃいけないの。 なんで、こんなに好きなのに、諦めなきゃいけないの。 なんで。

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