31 / 120
3-蜂蜜たっぷり生姜湯(2)
おはようございます!
俺はいつも通り浮き浮きしながら出社した。
ただの出社に毎日毎日何を浮かれてるんだって思う?
お察しのとおり、会社に行けば城崎さんに会えるからだよ。ふふ。
長時間掛けて作った資料のデータをうっかり消してしまっても!
お客さんからヘビーな資料作成を依頼されても!
会議室へコーヒー二十杯出すように頼まれても!
今朝はタイミング悪かったみたいで逃しちゃったけど、朝と夕には城崎さんの可憐な姿を見れると思えば、折れた心もすぐ復活する。
資料の作り直し? はい喜んで!
検証環境が落ちたからデータセンター行ってマシン見てこい? 任せてください!
テスト印刷したからついでに運用部から貰ってこい? ちなみに無理言って急がせたから担当の人怒ってるかも? 笑顔で切り抜けます!
「あ? 出かけんの?」
「はい! お帰りなさい宗さん!」
データセンターと運用部へ出かけるべく廊下に出たところ、外から戻ってきた先輩に出くわした。
鍋パの日に助けてくれた人だよ。高山宗さん。この人は俺と同じタイミングで法人事業部に異動してきた。なので、最初の部の説明とかを一緒に受けて顔見知りになった。
そうなんだ。法人事業部には高山さんが二人いるんだ。俺と一緒に仕事してる高山宗吾さんと、異動してきた高山宗さん。宗吾さんがすでに高山さんとして定着しちゃっているので、自然と後から来た高山宗さんは『宗さん』と呼ばれることになったらしいよ。
「ちょっと待て白田。どこに何しに行くんだ」
「データセンターにサーバ確認しに行って、運用部から帳票貰ってきます!」
では! って出かけようとしたら、宗さんに首根っこ掴まれた。
「また雑用してんのか。お前さあ、新人じゃないだろ? キャリアあんだろ? そんなお使いもっと若い奴にやらせろよ」
「でも、俺まだ社内の様子に疎いですし、こういうので横のつながり作るのもいいかなって思って」
「そんなの、他にもっと効率のいい方法あるだろが。お使いは新人にやらせろ」
「でもぉ……」
俺が困り顔を作ると、宗さんは手を離してため息をついた。何か呟く。
「………… 、お前、見た目が見た目だから、なめられてんだよ。今はいいけど、馴染んできたら考えろよ」
「はい。心配してくださってありがとうございます」
「あー、俺のことは気にすんな」
宗さんは背中を向けて軽く手を振り、事務室に入っていった。いい人だよね。
今後どうするかは後で考えるとして。さ、今日は頑張るよ!
ともだちにシェアしよう!