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3-蜂蜜たっぷり生姜湯(6)

城崎さんがふと時計を見た。 「おい白田。もう夜だぞ」 「はい。すみません、城崎さんがお休みなのに一日気づかなくて、定時になってからようやく来たので」 もっと早くに気づけばよかった。そうしたら、医者に行く時も付き添えたのに。 この様子じゃ、きっと外に出るのは大変だったんだろうな。 「気づかなかった……? ……いや、いい。なんでもない」 城崎さんは、そこはかとなく不満顔で言う。 「もう八時過ぎだぞ。いいのかここにいて」 どういうことですか? やっぱり帰れってことですか? 嫌です帰りません。 「城崎さんが元気になるまで帰りません。明日土曜日ですし」 「はぁ!? 泊まるつもりか!?」 「はい! 泊めてください! あ、でもどっかその辺の床で適当に寝るんで、お手間はとらせません!」 床での雑魚寝は慣れてる。学生の時はもちろん、実は前職でもよく会社に泊まり込んでた。 俺は体が小さいから、ダンボールが二枚あれば、どこでも眠れる。もちろん、敷きダンボールと掛けダンボールの二枚だ。更に、機器の梱包材とか、分厚いファイルとか、そんな物があれば、寝具のグレードが上がる。 城崎さんの家には、ダンボールはないけれど、もこもこしたラグが敷いてある。そこなら寝られそうだ。 「ちょっと待て、床とか意味が分からない」 「大丈夫ですから。俺のことは気にしないでください。それより城崎さんが早く寝てください」 「寝たい。寝たいが、白田が変なことを言うから」 心底だるそうに眉が下がってきているのに、城崎さんは寝てくれない。 どうすれば寝てくれるのかな。 「まず、白田は今晩うちに――」 途中まで言いかけたところで、咳の発作に襲われて、城崎さんはベッドに突っ伏した。呼吸できてるのか心配になるくらい咳が出てる。 せ、背中さすってあげたらいいのかな。おそるおそる近づいて、城崎さんの背を撫でさすってみる。 咳は止まらない。城崎さんの体も熱い。 しばらくそのままでいたけれど、少し経ってようやく咳がまばらになってきて、城崎さんはぐったりとシーツの上にうずくまった。 「白田がうちに泊まるとか……ごほっ……認めない、からな……」 真っ赤な顔でそう呟きながら、城崎さんは力尽きて眠ってしまった。 意外と意地っ張りなんだな。もう。 冷えるから毛布かけますよ。 こんな、咳こみ過ぎて力尽きて寝ちゃう人なんか、ほうっておくわけにいかないじゃないですか。 なんと言われようと、城崎さんが元気になるまで、俺は帰りませんからね。

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