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3-蜂蜜たっぷり生姜湯(9)

ふ、ふふ。うふふふふ。 皆さんこんばんは、白田有理です。 あれ。ごめんね、なんかよそよそしくなっちゃった。 いや、さあ。どんな顔して話を続けたらいいか分かんなくって。 城崎さんへの大切な想いを改めて意識したところで、この話は終わると思ったでしょ? 終わらないんだよ。終われないの。続けざるを得なくなったの。 だってさぁ……けほっ、けほげほげほっ! げほげほっ……ぉえっ。 このありさまなんだよ。 ◇ ◇ ◇ ああ酷い。これは酷い。酷い風邪だ。 まず体が砂袋になったみたいにだるくて重い。もちろん節々もあますところなく痛い。 咳も止まらない。 診療所の待合室では、俺がのべつまくなしにげほげほぜーぜーやってるもんで、居合わせた人たちに避けられた。 そりゃもちろんマスクはしてたけどさぁ。マスクしててもあまり近寄りたくないでしょ。こんなやつ。 あからさまにえげつない咳してるもん。申し訳ない。 風邪ひいた原因? 聞いちゃう? えぇぇ、やだなぁ、決まってるじゃん。 城崎さんにキスしたから。えへ。 熱が高いのも、咳が出るのも、症状が全く一緒だもの。 そして城崎さんから風邪貰って今飛び跳ねたいくらい嬉しいんだけど。俺、おかしいかな。 城崎さんの体内で育った風邪菌が、俺の中で増えて元気に暴れてる。 ふふ。こいつめ。おいたが過ぎるぞ。しかたないなぁ、もう。ふふ。 うん。この風邪菌は城崎さんと俺の二人で産み育てたようなものなわけだ。(城崎さんに感染させたバカヤロウについては考えないものとする) つまりさ。 城崎さんと、俺の。 二人の。 二人のこども。 ああどうしよう。全身だるくて腕も上げたくないくらいなのに、嬉しくて嬉しくて、うずくまって悶えてる。この可愛い、愛しい風邪菌は絶対誰にもあげないんだ。全滅するまで、俺が最後まで面倒見るんだ。 枕に熱くなった顔を埋めて、ごろんとしたら、毛布がベッド下に落っこちた。 だるくて拾いに行けない。 でも体はうずうずしてるし、顔は緩んで止まらない。 今俺がおかしいのは分かってる。風邪も変人も重症だ。 とりあえず言っておく。 ごめん。変態気味でごめんなさい。 でも、嬉しいんだ。城崎さんと同じ風邪菌をもってるって、城崎さんと共通項があるってことが。

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