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3-蜂蜜たっぷり生姜湯(11)

ああ、気まずい。 俺の症状が、城崎さんのそれとまったく同じであることがばれた。 「すまない白田。気をつけていても、やっぱり僕の風邪をうつしてしまったんだな。本当に申し訳ない」 俺の目を見つめて謝る城崎さん。 まさか、看病中にうつったんじゃなく、寝てる隙に俺が城崎さんにキスしたのが間違いなく感染の原因なので、そんなに気に病まないでください、だなんて絶対に言えない雰囲気だ。 目を逸らすわけにもいかないから、城崎さんの真摯な視線を受け止め、見つめ返してる。お、重い。 「で、でも、逆に、この風邪については症状が既に分かってるってことですから! 熱さえ下がってしまえば良いわけですから!」 「それは、そうだが……」 ああ、いたたまれない。 俺が今、熱で結構しんどいことも、城崎さんには分かってるってことだ。 ただ、城崎さんの時と異なることが一つだけある。 患者が、病を喜び、歓迎している。城崎さんが看病に来てくれて、患者が有頂天になっている。 しんどいけどしんどくない! 咳き込んだら、城崎さんがその手で俺の背中をさすってくれるし、食事時には城崎さん自ら卵入りの雑炊を作ってくれる。 もちろん、城崎さんが! お匙ですくって! ふーふーして! ひと口ずつ食べさせてくれる! いいでしょ。食事時に食欲ないですって正直に言ったら、「でも、何か食べないと駄目だぞ」って言って、わがままっ子を説き伏せるように、食べさせてくれた。 この上なく優しい味がして、お腹にするすると入っていく。 「ぐすっ、おいひいれふ……!」 咳しすぎて嗄れた声でそう言ったら、城崎さんは照れくさそうに笑った。 「料理するなんて久しぶりだったから、味に自信はないんだが、そう言ってくれると、嬉しいな」 ああ、女神だ。いや、男なんだけど。美と慈愛の神。 「ええと……白田、泣いてるのか?」 困ったように眉をハの字にして、城崎さんが俺の顔をそっと覗きこむ。 「けほっ……すみません、俺涙腺ゆるいんです。美味しいもの食べて幸せになると、堤防が決壊するっていうか……その、感激で涙が出ちゃうんです」 子どものころからの癖だ。学生の頃は、美味いめし屋の目安にされていた。白田が泣いた店は間違いないって。にゃはは。 この年になっても治らないのは困った話だけど。 「ふふ。白田は隠し事ができないんだな」 城崎さんは微笑んで俺を見つめる。あれ、なにこれ、いい雰囲気じゃない?

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