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4-用法・用量を守って正しくお使いください(2)
「ちょっ、おい、きったねぇな宗吾!」
高山さんの向かいに座ってた宗さんが、顔をしかめてウェットティッシュでデスクを拭く。
「顔も拭いとけ」
高山さんにもティッシュを渡す。高山さん、口の回りがコーヒーで濡れてる。
「ご、ごめんね白田くん、予想外でビックリしちゃったんだ」
慌てて俺にフォローを入れながら、口元をティッシュで押さえる高山さん。
う……ん、やっぱり、仕事中に話す内容じゃないよな。今は止めとこう。
高山さんの好意は嬉しいけど、違う機会にしよう。
「あの、高山さん、やっぱり止めときます。ありがとうございました」
って言って、前に向き直ろうとしたら、椅子を掴んで止められた。
肘掛けのところを高山さんががっちり掴んでる。え、えと……。
「だめだよ、それだけ話しておあずけ……うんと、いや、おしまい、だなんて許さないよ」
「そうだぞ。俺なんか真正面からコーヒー浴びせられてんだ。これで話さないとか、ふざけるなよ」
ダブル高山さんにすごまれた。
は、灰谷? 灰谷がとりついた? この勢いは覚えがあるよ。恋愛相談を持ち掛けて、途中で邪魔が入った時の灰谷だよ。何がなんでも逃がさないって執念が一緒だよ。
「でも、よく考えてみたら、ただの寂しい片想いですし、相手の方も、俺じゃ到底釣り合わない、っていうか高嶺の花っていうか身の程知らずっていうか、無茶な憧れですから!」
「白田くん。君は勘違いしてるようだけど、俺たちが聞きたいのは、そういう無謀な話なんだよ。告白しても、絶対にフラれる。それぐらいの無茶を聞きたいんだよ」
なんか知らないけど、高山さんがこんこんと俺を説得しようとしてる。
宗さんも向かいで深く頷いてる。
うーん……。
「た、確かにもう既にフラれてはいますけど」
「いいね白田くん! フラれても諦めてないんだ?」
「ただの合法ショタかと思ってたが、見直したぞ白田」
「しかももう二回もフラれてますけど……」
「白田、出し惜しみはいいから、さっさと話せ」
「白田くん、話してごらん。真剣に聞くから」
や、優しい先輩たち……なのか、な……。
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