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4-灰谷九次のよた話

うっふっふ。 聞いた? さっきしろやんから喜びの知らせがあったんだ。やったね。俺達の作戦が大成功しちゃった。 とうとうあのひねくれ者のきのぴーに春を呼ぶことができたよ! なんか、『一か月のお試し期間』? とかなんとか言ってたのは良く分からなかったけど。しろやん大興奮だったし。 いやー、良かった。うん。良かった。 『ぷる』 ……あ、やべ。 つい喜びのあまり、反射的に相手も見ずに電話取っちゃった。 画面に『きのぴー』って出てるよ。 さては、きのぴーもはしゃいでるな! でもなー。きのぴー素直じゃないからなー。 「おまたせしました、灰谷ですー」 『おい、灰谷!』 「それでは灰谷でしたー」 俺は何も聞かずに通話を切った。 ほら言ったじゃん! ほら言ったじゃん! なんでお怒りモードなのよ! おかしいじゃん! 俺なんかした!? ……いや、したけれども。 しろやんがきのぴーに告白したいって言うから、きっかけになればって思って、面白い映画紹介して、ついでにきのぴーにもチケット渡しただけじゃん! ……あれ、なんか俺、主犯? 主犯格? 違う違う。あの高山って先輩がしろやんに入れ知恵してさ。 あー。 また電話鳴り出したよ。もちろんきのぴーだよ。 「はい」 『切るなよ。次切ったら直接行くからな』 「ふえぇん」 『やめろ。似合わない』 「そうよねー。こういうのはやっぱしろやんじゃないと」 『! だ、誰もしろたの話なんかしてない!』 んふ。なによもう。このきのぴー、いつもの楽しめるヤツじゃん。 「えー。しろやんの話じゃないの? しろやんからはさっき知らせがあったよ? きのぴーと付き合うことになったって。しろやん喜びで泣きそうなくらい興奮してた。おめでと!」 『あ、あぁ、ありがとう』 ちょっとぎこちないけど、きのぴーが素直に『ありがとう』って! 早くもしろやん効果が出てるよ! 良い子になりつつあるよ! 「で? 俺に何の用さ?」 『いや、その、あー、やっぱり……なんでもない。遅くに邪魔したな』 ちょちょ、待ちなさいきのぴー。 用がないなら俺に話を聞かせなさい。 『な、何の話だ』 決まってんじゃん。 「しろやんと付き合うに至った決め手はなんなの? しろやんのどこを気に入ったの?」 『……は。何だそれ』 「惚気させてあげるって言ってんの。ねぇ、何?」 『……純粋で、一途に好きって言ってくるところ』 うひゃひゃ、きのぴーが素直な良い子になってる! すごいよ! しろやん効果すごいよ! 「そうだよねー。しろやん一途だよねー」 『おい、用がないならもういいか。切るぞ』 「あ、そう? じゃ、しろやんとお幸せにね!」

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