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5-ばかしあい(3)
その後も、物憂げな女の人が蚊帳の手前だか向こうだか(透けてるからどこにいるのか分かんないの!)でうつむいてる画だとか、番町皿屋敷のお菊さんだとか、なかなか強烈な存在感がある方々とお会いした。
俺は、遊馬さんの服の裾掴んで後ろにくっついたまま全部、ごめんなさい、して回った。
遊馬さんといちゃこらしたいとか、不純きまわりない動機で来てごめんなさい。
遊馬さんに抱きつく? 無理だよ。遊馬さんの後ろにくっついて歩くのが精いっぱいだもん。
はあぁ。遊馬さんとデートってことに浮かれて忘れてたよね。
俺、オカルトはだめなの。お化け屋敷とか、中に人が入ってるって分かってるやつは大丈夫なんだけど、心霊写真なんか絶対見ないし、ましてや心霊スポットで肝試しなんてとんでもない。
この展示物、描かれて百年以上経ってるのばっかりなんでしょ?
そんなの霊も宿るよ。絶対宿ってるよ。
あぁもう、馬鹿馬鹿馬鹿。なんでこんなとこ来ちゃったの俺のお馬鹿さん。
遊馬さんに甘えるどころじゃないよ、もう。
「あ、しろた、大丈夫だ。可愛いのもいるぞ」
「ひッ」
遊馬さんが指さすから思わず見ちゃったじゃないですか!
精霊馬にちっちゃい亡者が乗ってる。
もうだめ、これ単品だったらぎりぎりセーフだったかもしれないけど、ボディブローを何発も食らってフラフラなんだもん。デコピンでK.O.だよ。気がついたら外にいて、池のほとりで遊馬さんとベンチに座ってた。
遊馬さんはなぜか、青い顔じゃなくて赤い顔してたけど、理由は聞けなかった。たぶん俺が怖がる余りに何かやらかしたんだろうから。
第一週の成果!
遊馬さんの服の裾を掴めました! 以上!
だめだ、灰谷には絶対言えない。
遊馬さんは楽しそうだけど、俺が目指してるのはそうじゃないんです。いやまあ、遊馬さんの笑顔が見られるなら、それに越したことはないんですけど。
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