67 / 120
5-ばかしあい(15)
賑やかな食堂の片隅で、大きな窓から入る陽の光を浴びて、ぼんやりする。
気持ちいい。ちょっと喧騒が気になるけど、暖かくて、気持ちいい。
「白田! 早く食い終われ! 黙ってにこにこしてねぇで、話せ! 好きなだけ惚気ていいって言ってんだぞ!」
「そうだよ白田くん! ずるいよ! 一人だけ幸せになるなんて! 俺達にも楽しみを分けてよ!」
今日の昼食はオムライスにした。面白いの。変わってるの。中華風で、餡かけのオムライス……、なんだ、天津飯じゃん。
変なもの並んでるなーって思ったのに、天津飯じゃん。
やっぱり俺、相当浮かれてるなぁ。
「白田くん! ひと口が小さいよ! 草食系控えめ男子にもほどがあるよ!」
「高山さん。しろやんは草食系じゃないです。がっつり肉食系です。天使の皮をかぶった人食いミュータントなんです」
「え、意外だなぁ……あぁ、でもそうだね。よほどの肉食系じゃないと、あの白百合さんには挑めないよね」
高山さんが、さっきのことを思い出してか、身震いした。
「もういい! 白田、口開けろ! 俺が食わせてやるから! スプーン貸せ!」
しびれを切らした宗さんが、俺の天津飯とスプーンを持っていった。俺の隣に腰を下ろすと、ぱかりと開いた俺の口に、リズムゲームのごとく、残りのご飯をタイミング良く押し込む。
もぐもぐもぐ、ぱか。もぐもぐもぐ、ぱか。もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ごくん。
宗さんのおかげで、昼休みを二十分残して完食することができた。
「で!? 何があったの週末に!」
身を乗り出す高山さん。めっちゃ目がキラキラしてる。
「その浮かれっぷりは、相当良いことあったんだろ!?」
宗さんも頬杖ついてちょっと斜に構えながらもやっぱりキラキラしてる。
あれだね。恋話ってのは年齢性別関係なしに人を惹きつけるんだね。
うんうん、納得。
「しーろーたーくーん!! 一人で何を納得してるのか知らないけど、その前に俺たちに教えてくれてもいいでしょ?」
え、えへ?
「えーと、その」
『うん』
三人が揃って身を乗り出す。あ、灰谷は内容知ってるからそれほどでもない。でもこれ以上ないってほどにやにやしてる。
「あの」
「もうタメは充分だ。吐け」
へへ。
「しらゆりさんと、きすしました」
言った途端に灰谷が噴火した。
「しろやんのバカッ!! こんなに美味しい話を、いきなりネタバレから入るなんて、台無しだよッッ!!」
勢いよく立ち上がった灰谷に、怒られた。
ともだちにシェアしよう!