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5-ばかしあい(19)

遊馬さんとお買い物。二人きりで、仲良く。 あ、入口のガラスにまた俺たちが一緒に映ってる。身長差、二十センチくらいかな? 良くない? すごく良くない? お似合いじゃない? ちょっとさ、キスする時にさ、遊馬さんは頭下げて、俺は背伸びしなきゃだめだけど、そういうキス、きゅんとするよね。しない? 灰谷ならきっと分かってくれると思うんだけど。 「どこ見てるんだ、しろた。前見てないと人にぶつかるぞ」 えへ。遊馬さんに、ぎゅっと手を握られちゃった。遊馬さんたら、俺と手をつなぐのはもう慣れっこなんだよ。 手をつなぎながら、俺がにっこり下から顔を覗き込むと、まだ赤くなって手を振り解こうとするけど。逃がさないもん。 近所のおっきいスーパーに来たんだ。お昼過ぎたばかりだから、比較的空いてる。 俺がもたれ掛かるようにカートを押して、遊馬さんはそのカートを軽く引っ張って誘導しながら歩いていく。 どこにでもいる休日の買い出しスタイル。そこにも、ほら、あっちにも似たようなカップルがいる。 俺たちも、仲間入りだ。 「あの、遊馬さん。俺献立考えてみたんです」 「どんなのだ?」 「肉じゃがと、ほうれん草のおひたしと、お味噌汁と、鮭焼いたやつ。どうでしょう」 ザ・家庭料理! なコンボでしょ。 それ聞いて遊馬さんがにこって笑ってくれた! 「美味しそうだ。いいんじゃないか、正統派で。しろたのうちには、調味料はあるのか?」 「味噌がないです。あとは大丈夫」 「じゃあ味噌を買うのを忘れないようにしような」 はぁぁ、何この会話! 何この幸福感! 幸せで! 幸せで溺れる! 「なんだか、同棲してるみたいな会話ですね! どきどきします」 「ど、同棲!?」 ちょっとの間考えていた遊馬さんは、真っ赤になって足を止めた。 「馬鹿なこと言うな! 同棲、だなんて」 俺も立ち止まったのに、遊馬さん、俺の顔見てくれなーい。赤い顔で俯いてる。 目が合ったら、もっと赤くなっちゃいますもんね。ねえ遊馬さん?

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