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5-ばかしあい(23)
「……つまり、俺と遊馬さんは、初めから両想いだったんですか」
「そ、そうだな」
シールドゲージがとうとう空になってボディにダメージが入り始め、遊馬さんがだんだんと耳を赤く染めてる。
俺も驚愕の事実に気分が上がりに上がって、顔が赤くなってきた。
二人して赤くなってる。どうしよう。嬉しい。嬉しい。嬉しい。遊馬さん大好き。
「なんで、あの映画の帰り道で、付き合う理由がない、なんて言ったんですか」
「だって、僕は枕を止められないのに、枕しながらしろたとも付き合うなんて、しろたに失礼だと思って」
遊馬さんが俯く。
「そんな、失礼だなんて。片手間でも遊馬さんが俺と付き合ってくれたら、それだけでも嬉しいんですよ?」
遊馬さんが顔を上げた。頬が赤くて、目がちょっと潤んでる。
その潤んだ目で俺を見つめた。
「あの時の僕は、そんな僕にばかり都合のいいことをして、しろたが離れていってしまうのが怖かったんだ。……でも、しろたが僕の作った壁を壊して、僕を攫ってくれた。この一か月、今までにないくらい、どきどきした」
そんなこと。
「俺だって必死でした。……たぶん、遊馬さんと同じくらい、どきどきしました。でも! 遊馬さん」
「な、なんだ」
俺は遊馬さんに抱きついて、その胸に顔を埋めた。
「『一か月』は単なる目安ですから。確かそんな事を灰谷に言った気がします。これからが本当のお付き合いですから!」
「うん、そうだな」
二人、顔を見合わせて笑った。キスもしたかったんだけど、キスしたら、近すぎて遊馬さん見えなくなっちゃうでしょ?
だから、キスはなしで、遊馬さんをぎゅっと抱きしめた。遊馬さんも抱きしめてくれた。
◇ ◇ ◇
「なあしろた、そろそろ料理を始めないか」
しばらくして、遊馬さんがなぜかそわそわしながら言い出した。
「そうですね。……あ。エプロン。ちゃんとしますよ」
とりたてて何か言うこともない、普通の生成りのエプロン。背中できゅっとちょうちょ結びをして、どうですか? って遊馬さんに笑いかけたら、途端に遊馬さんは壁まで逃げた。
壁におでこをつけて、手で赤い顔を覆って何か言ってる。残念ながら、俺には聞き取れなかった。
「………… 。………… 。……………… 」
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