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6-愛してほしいの(7)

うー。あー。 俺は、トイレの壁におでこをつけて冷やしながら懸命に、ほのぼの可愛い遊馬さんを脳裏に思い浮かべて冷静になろうとしていた。例えば、ディープキス拒んでぷるぷるする遊馬さんとか、乳首って言えなくて赤くなる遊馬さんとか、性感帯刺激されて怒る遊馬さんとかだ。 いや待て、この想像は逆効果なんじゃないか。 だって今もまだ、猛烈に遊馬さんをどうにかしたいもの。 落ち着け、おさまれ俺(の息子)。 さっきのエロティックな遊馬さんは、気のせいだ。 ちょっと混線してしまったようなもので、あれは、その、なんていうか。 「しろた!」 勢いよくトイレのドアが開いて、名前を呼ばれた。そして、俺が振り返る間もなく背中から抱きしめられた。 「しろた、すまない。驚かせてしまって、本当に、すまない」 俺にこんなことを言ってくれる人は、この世に一人しかいない。 「ぁ、すまさ、ん」 「さっきの僕は、その、浮かれていて、おかしかったというか、その」 俺を抱きしめて、らしくもなく慌てた声で謝って。 「しろたと、ちゃんと恋人みたいなキスができたことが、その、嬉しかったんだ。突然だったけれど、なんとかまともにできたのが、嬉しかったんだ。それで、心ここにあらず、に、なってしまって」 いつもはスマートなのに、しどろもどろになってまで。 「……みっともないところを、見せた。すまない」 「キスが、ちゃんとできたから?」 「そう、なんだ。情けない話で、恥ずかしい。一瞬、その先まで、考えてしまった。だから」 「先?」 「あ、いや、なんというか、その、うん。……先だ、な」 先。キスの先。 遊馬さんも、その先のこと、考えてくれた。 それなら、迷うことなんかないじゃないか。 「遊馬さん」 「うん」 「今週末……ううん、今日、遊馬さんの家に泊まりに行ってもいいですか?」 遊馬さんは赤くなって、それから、俺を少し強く抱いて言った。 「いいよ」 「仕事が終わったら、急いで着替えとか取ってきますから、そしたら」 遊馬さんのところに。 でも、遊馬さんは頷かなかった。 「……着替えは、僕のでもいいだろ? わざわざ取りに帰らなくてもいいじゃないか」 意図を計りかねて俺が黙っていると、遊馬さんは俺の肩に顔を伏せた。 「ワガママを、言ってる。僕は早く、少しでも長く、しろたと二人きりになりたいんだ」 遊馬さんの、初めてのワガママ。小さな小さなワガママでも、愛しい遊馬さんは赤くなってた。

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