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6-愛してほしいの(18)
と、決めたけれど、だ。まさか遊馬さんとの初めてに、ずどぉぉおん! なんてやらない。
遊馬さんの顔を見ながら、ゆっくり奥へ沈めていく。
残り三分の一くらいになって、いったん動きを止めた。
遊馬さんの眉がきゅっと寄ってる。あれ、解し足りなかったかな。
「遊馬さん、苦しいですか? ちょっとここで休憩しましょうか」
俺がそう提案したら、遊馬さんは首を横に振った。
「やめるな。僕は大丈夫だ」
ぎゅっと手を繋いだ遊馬さんの視線は、快楽を欲しがっている……のとは違うように感じた。純粋に、俺のことだけを求めてくれている、なんて甘い話はないのかもしれないけど、そう思ってしまうような目をしていた。
俺は、遊馬さん以外の事を頭からしめ出したくて、遊馬さんの瞳だけを見つめて腰を進める。
やがてぴたっと、静かに肌が重なった。全部入った。
落ち着いて、真面目な空気の中でコトを進めたからか、遊馬さんは赤くもならなくて、静かに月のように、俺のことを見つめ返してくれていた。
「しろた、キス、しよ」
そう促されて、抵抗する理由などないから、ごく自然に、何一つ力むことなく、遊馬さんを抱きしめてキスをした。
空いた手で遊馬さんの髪を撫でた。俺と違ってまっすぐでさらさらした髪。大好きな髪。
大好きな唇。大好きな……遊馬さん。
黙って腰を引いた俺は、勢いよく再び奥へと叩きつけた。
「……ンんッ!」
「遊馬さんッ、遊馬さん、好きです。すき。だいすき」
「なッ!?」
白百合さん。初めて見た時に白百合のようだと思った。真白く、清く、凛として。
そんな遊馬さんには不似合かもしれないけれど、この胸の内に抱え込んだ劣情をすべてぶちまける勢いで激しいピストンを続けた。
「遊馬さん」
奥。
「遊馬さんっ」
奥へ。
「だいすき」
もっと奥へ。
「大好きなんですッ」
誰よりも奥へ、なんて思わない。いや、もうそう思った時点で矛盾しているのだけれど、とにかく、今ここだけでは遊馬さんの唯一になれている、ああ、これも違う、遊馬さんを独占したいわけじゃない、好き、遊馬さんが好きなんだとにかく、これを伝えるには……ああ、俺の頭じゃあ、『誰よりも奥へ』になっちまう。
「やめっ、やめろっ、しろたッ」
苦しそうに眉根を寄せた遊馬さんは、なぜか嫌がる。
「なに、こぇッ、こんな、こんなの知らなッ、ぁんっ、お前、何してッ」
朝露を纏ってたわんだ百合の茎のようにのけぞった背中を支えて、俺はがつがつと奥を打ち続けた。
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