ありえない！ あっちゃいけないよ！ いくら遊馬さんが魅力的でも、それはあっちゃいけないよ！ はい。説明します。 遊馬さんが、痴漢、されてるんです。 俺のところから振り向くと、人と人の隙間に遊馬さんの右半身が見えるんだ。 遊馬さんの真後ろに背の高い男性が立っているんだけど、そいつの手が！　手が！ いかにも自然体をよそおって、遊馬さんの大事なところをまさぐってるの！ ちょっと！　それチャック開いてない!? スラックスの中に手が入ってない!? スラックスの中に手が入ってるってことは、さては遊馬さんの大事なところに、直接アクセスしてんだろテメエ！！！！ そこのアクセス権限は俺にしかねぇんだよ！！　あ、枕はゲスト扱いの認識だからね？ 不正アクセス許すまじ！ 許すまじだよ！　天誅だよ！！ えっと、どうすればいいんだ？　今だけでいいから落ち着け俺。 一刻も早く殴りかかりたいところだけど、それじゃだめだ。 確固たる証拠がないと、最終的に痴漢野郎を逃がすことになっちまう。 どうする？　どうすればいい？ うーん……遊馬さん、嫌な思いをしてるだろうけど、少しだけ待っててください。 言い逃れできないように、動画撮ろう。 犯行現場と、犯人を特定できる映像が撮れればいいよね。 狭い中でもぞもぞっとスマホを取り出す。 うん。いけるいける。撮れた。 短いけど、犯行の様子を押さえた。痴漢野郎も映ったから、証拠になるんじゃないかな。 もういい？　もういいよね？ これ以上遊馬さんに辛い思いをさせたくないよ。 強引に人を押し退けて、手を伸ばす。掴んだ！ 『この人、痴漢です！』 ……ん？