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8-往きはよいよい帰りはこわい(4)
「んうぅぅっ、ぁあっ、や、やらっ、ばかになうっ」
半ば悲鳴のような喘ぎ声の合間に、ねばついた水音が、くちっ、ぬちゃっ、と混ざりこむ。
俺の上に乗っかった遊馬さんが、これでも口を手で塞いでのけぞってる。
ええと、絶対に、絶対に口には出さないけど。ここだけの話なんだけど。
……遊馬さんのお口、ゆるくないですか。いえあの、俺は喘ぎ声をあげてもらった方が気分が盛り上がるタイプなので、大歓迎ですけど。
この声を聴きながら目を閉じて、仕事モードの遊馬さんを思い浮かべるとさ。
微笑みながら部下から報告聞いてる遊馬さんとか、遊馬さんのことを良く思ってない課長から、打ち合わせの席で言いがかりのような反論を受けて、舌鋒鋭くやり返す遊馬さんとか(もちろんその後は笑顔でフォローも忘れないよ)、思い出すとさ、このエロくてしどけない声が俺の下半身に突き刺さって燃えるんだよ。うん。
だって、あの遊馬さんが、俺の前では理性なんてどっかやっちゃって、気持ちいいって、隠さずに言ってくれてるんだよ。まあね、遊馬さん申し訳程度に口押さえてるけど、それすらも、もう煽りでしかないよね。
だからさ、俺は全力で突き上げるの。
もちろん俺も気持ちよくなりたいし、それ以上に遊馬さんに気持ちよくなってほしいから。
「しぉた、手、つなご」
おやぁ。また遊馬さんが可愛いこと思いついたよ。
とは言え、俺は今、両手をベッドについて体を支え、腰を上げてるもんだから、手をつなぐのは難しい。あ、でも、ぎりぎり片手ならいけるかな、と思って、腰を突き上げながらも左手を遊馬さんへとのばした。
「そっち、もっ、んん……ぁっ」
よくばり可愛い遊馬さんに喘ぎながらも両手を要求された。
両手つないじゃったら、遊馬さんを気持ちよくできないじゃん。それは困るよ。遊馬さんも寂しいでしょ? って思って遊馬さんを見上げるけど、遊馬さんは頑として両手を要求してくる。
遊馬さんがそうしたいなら、まあ、いいか。俺は腰を突き上げるのを止めて、すとんとおしりをつき、右手も遊馬さんに差し出した。
俺の上に座った遊馬さんを支えるように、両手をつなぐ。
遊馬さんはようやく満足してにこりと笑ってくれた。
笑った遊馬さん、可愛い、可愛い、可愛い!
け、ど。あれ?
「ふえ?」
俺はうっかり間抜けな声をあげてしまった。
え、なに? 遊馬さん。俺動いてないのに気持ちいいんですけど。
「ん、ぅ、しぉた、きもちい?」
俺はこくこくと頷く。
遊馬さんはそんな俺を見てまたにこりとした。
歯を噛みしめて頑張ってる。
「ぁ、ん、んぅ」
腰を前後させて、快楽を産み出してる。そしてやっぱり、自分で溺れそうになってる。
もう。この可愛いひとは。
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