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8-往きはよいよい帰りはこわい(6)
「遊馬さん、ぎゅってしてくれるのは嬉しいですけど、気持ちよくなれないですよ? ちょっと緩めてみませんか?」
「ん”ー」
そろそろ赤みが頂点に達しようかという遊馬さんのお顔。困ってる。
「脚を開くのは、ちょっとその、みっともないじゃないか」
確かに理性が飛んでもすぐ戻れるくらいゆっくりやりましょう、とは言ったけどさ。戻りすぎだよ。
ああもう完全に目が覚めちゃってる。恥ずかしがりの遊馬さんに戻ってる。
恥ずかしがりながらも、完全に脚を閉じちゃうんじゃなくて、俺を巻き込んでるから、厳密に言うと脚は開いてるんだけど。いわゆるアレ。だいしゅきホールド。きつくて俺動けないけど。
遊馬さんの太ももをゆっくり撫でながら、遊馬さんの目を見て話しかける。
「じゃあ、あんまり脚を開かない体位にしましょうか。バックとか。寝バックでもいいし」
「い、いやだ! それじゃ、しろたがイくところが見られないだろ!」
え。なにそれ。
遊馬さん俺のそんなとこ見てたんですか。あんまり面白くないと思うんですけど。
「そんなことない。しろたはイく時、もちろん気持ちよさそうなんだけど、ちょっと切ない顔をするんだ。僕はその顔を見たいんだ」
遊馬さんは真剣な顔で主張し始めた。
「や、ちょっと、遊馬さん、恥ずかしいこと言わないでください。そんなとこ見てたんですか? 次から俺、イくの恥ずかしくなっちゃうじゃないですか」
「恥ずかしがることはないぞ。ちょっと男らしさもあって凛々しいぞ」
うー。
「じゃ、じゃあ、このまま正常位でさせてください」
「う、え、や、やだ。こんな脚開いて、はしたないだろ。М字開脚を越えてるんだぞ」
ううん。堂々巡りになっちゃった。
恥ずかしがってる遊馬さんには悪いけど、俺、早く気持ちよくなりたい。早く! じゃないと俺も落ちついちゃうよ。
よし、ここは慣れないけど頑張ってみようか。床ドンいくよ。
「!」
駄々をこねる遊馬さんの顔のすぐ横に、ぽす、と片手を突いた。ちょっと背丈が足りないんだけど、遊馬さんの上に屈みこむようにして、目線を合わせる。よし、捕まえた。
「し、しろた?」
精一杯、俺にできる最大限の男らしい顔で、遊馬さんに迫る。
よかった、遊馬さん見入ってくれた。
目を伏せて遊馬さんの右手にちゅっとキスをして、また遊馬さんを見つめる。
「な、なんだ、ずるいぞそれは。なんでしろたがカッコよくなるんだ」
「カッコいいですか? 嬉しいです」
あくまでも男らしく、控えめに優しく微笑んでみせる。
「遊馬さん」
遊馬さんの間近に迫って、囁くように言ってみる。
「確かに、脚を開いてるのは恥ずかしいと思います。でも、それが俺にとっては最高に嬉しいんです。だって、恥ずかしいのに、あえて二人のために、大好きな遊馬さんがそうしてくれてるんですよ。こんなの、嬉しくなかったら嘘です。二人で気持ちよくなりたくて、この体位をとってくれてるんでしょう?」
「ん、う、ん、そ、そうだな」
遊馬さんは俺の目から視線をそらせずに、かくりと頷いた。やった!
「じゃあもう少し、このままでやらせてください。一緒に気持ちよくなりましょう?」
真っ赤。遊馬さん、耳まで真っ赤。恥ずかしいんだ。
でも、遊馬さんは両手をのばして俺を抱き寄せて、軽くキスをした。
「駄々をこねてごめんな。しろた、好きだよ。……その、一緒に、気持ちよくなろ」
俺も、遊馬さん好きです、と囁くと、遊馬さんは赤いまま、嬉しそうに笑ってくれた。
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