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9-彼が望んだもの(2)
寝具屋さんで二人ふらふらと見て回った。
枕もいろいろ、布団もいろいろ。
遊馬さんがひょいと店頭のディスプレイを見て、顔色を変えた。
「しっ、しろた! しろたちょっと、こっちに来い」
なんですかぁ、と近寄ったら、パジャマを一そろい体に当てられて、サイズを見られた。
「サイズもSでぴったりだ。よし、これにしよう」
遊馬さん!? 朝と言ってたことが違うんですけど!
「あの、遊馬さん? パジャマは遊馬さんのを着るから、俺用のはいらないって話じゃありませんでしたっけ」
「状況が変わった。これは彼シャツの魅力を越えてる」
大真面目な顔で、訳の分からないことを言い出した。ちょっと遊馬さん、キャラが違いません?
「違わないぞ。僕はしろたをより可愛くするためなら、わりとなんでもするぞ」
えー。ちなみに遊馬さんの手にあるのは、もこもこ素材の黒猫ウェア。耳のついたフードと、絶妙な丈のしっぽつきショートパンツが特徴的だ。
うん。まあ、確かに可愛い。着心地も良さそうだし、これを着て遊馬さんとベッドでごろにゃんしたら、さぞかし気持ち良いだろう。
でも、待ってほしい。遊馬さんとベッドでごろにゃんするってことは、当然そのままえっちに雪崩れ込むはずだ。だって俺我慢できないもん。
遊馬さん。
遊馬さん、自分より小柄な黒にゃんこに抱かれる絵を想像できますか。たぶん俺はフードを被って猫耳ONで挑みますよ。だってその方が可愛いもん。
ショートパンツは残念ながら脱がざるを得ないですけど、これ、もこもこの靴下もセットになってますよ。結構しっかりにゃんこになりますよ。
白百合美人な青年が、ちび黒にゃんこに押し倒されて喘いでる絵、なんか変じゃありませんか。
「変じゃない。そもそもそんな俯瞰視点は、第三者がいない限りありえない。つまり、僕からは愛らしい黒猫が、しろたからはいつもの僕が見えるだけだ。なんの問題もない」
なんかもっともらしい理論で宥められた。
議論じゃ遊馬さんに勝てるわけがない。
黒にゃんこパジャマと、採寸の後オーダーメイドの枕を買うことにした。
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