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#8 優しいんだね

*  クラスの皆んなと昼食を摂り終えた僕は、提出書類を横山先生に渡しに行くため、職員室へ向かった。  その途中、廊下でばったりと柚弥に出くわした。 「橘君……!」 「裕都君! どこ行くの? 職員室?」 「うん、先生に出さなきゃいけないものがあって……。橘君、大丈夫だった……?」 「柚弥でいいよ。ああ、うん、全然平気! ごめんね、心配かけて」 「そう、ならいいけど……。横山先生、まだいるかな」 「ああ……、横山先生ねえ……。今職員室いないよ。もう少ししたら、戻ってくるんじゃないかな」 「え、そうなの?」  先程まで、柚弥は職員室に横山先生といたものだと思っていたので、僕は不思議に思った。 「ねえ裕都君、お昼食べた? 購買行った?」 「あ、うん。皆に教えてもらって、買って来て食べたよ」 「そう。ここの購買、結構種類豊富だよ。パンとかおにぎりとか。味噌汁も日替わりでー。早く行かないとなくなっちゃうんだけど……。はあ、一緒に行きたかった! 明日行こ!」 「うん! ……てゆうか橘君、お昼食べた? もう少しで休み終わっちゃうけど……」 「ああ……。実は、まだ食べてないんだよねえー。遅くなっちゃったし、面倒臭いからもういいかなあ。適当に何かお菓子とか食べて……」 「え……!? 駄目だよそんな、ちゃんと食べなくちゃ……! 午後保たないよ、ただでさえそんな細いのに!」  急に声を荒げた僕に、きょとん、とした顔をして柚弥は見上げていた。僕ははっと我に返る。 「あ……、……いきなりごめん。僕、お節介だって、結構言われるんだ。知り合ったばかりなのに、うざかったよね。ごめんね……」 「…………ううん。いいよ。うざくなんか、全然ないよ。……あはは、そんな真面目にちゃんと心配して貰えたの、久しぶりかも知れないな。 ——有難う。 優しいんだね、裕都君て!」  そう言って、柚弥は嬉しそうに、にこっと笑った。  きらっと光が弾け、きゅん、と胸が鳴るような笑顔だった。  優しいと言われたのを面映く思っただけじゃない。  少しづつ取り出されるような、彼の内側を見る素の表情は、正直眩しかった。 「そうかな……、」  何度目かのどぎまぎを、僕は照れた笑いにごまかして隠していた。そこへ、 「——ユキ」

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