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第3話

 促されるまま廊下を通って部屋に立ち入り、その広さに一瞬立ちすくんだ。ショウの住むアパートの部屋がリビングにまるごと入るのではないかと思われた。 「何か飲む? お茶でもお酒でも、……あ、お酒飲める年齢?」 「一応二十歳ですよ」  小柄で細身な体格は実年齢よりも若く見られることが多く、舐められてしまうのが悩みの種だった。人に身長を聞かれれば一七〇センチと答えはするものの、正確には若干届かない。それだけに背が高いという一事はショウにとって憧れでもあった。  緊張しつつ恐る恐るソファに腰を下ろす。手前のテーブルには、クラッカーやチョコレートの載った皿が置いてあり、手を付けた様子がないことから用意してくれたもののようだった。彰人はキッチンの方へ消え、その方から食器の触れ合う音が聞こえてくる。 「おかまいなく」  彰人に一声かけて、マネージャーに接客開始のLINEを送った後、ショウは部屋の中を眺め内心で感嘆の息を吐いた。  ワックスの行き届いたフローリングにクリーム色の壁、家具は黒っぽいグレーで統一されており、適度な重厚感と品の良さが感じられる。そして、CDをかけているのかピアノの清澄な音が邪魔にならない音量で流れていた。  その完成された部屋の中で、着古したティーシャツとジーンズの自分はいかにも不似合いだった。 「カフェラテ大丈夫?」  トレイで運んで来たコーヒーカップをテーブルに置きながら、彰人は尋ねた。 「よく飲みますよ。美味しそう。いただきます」 「熱いから気をつけて」  そう言って彰人は自分もカップを手に取った。そして皿の上の菓子を勧める。

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