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第6話
「ありがとう。また歳をとってしまった。一年経つの早いわ」
「充実してるからじゃないですか?」
「失恋した女によく言うわあ」
「麻由子さんの方が振ったんでしょ」
ショウがそう水を向けると、少しだけ意味深に麻由子は微笑んだ。
「だってなんか刹那的なんだもん」
麻由子によると、デートは食事かゲームセンターかカラオケ、家に行けば対戦ゲーム、来る日も来る日もそればかりで、時間をむざむざ浪費することに倦んで別れることにしたとのことだった。
「はじめのうちはそれでも良かったんだけど、その時間を使って資格を取る勉強とかした方が建設的だなって思うようになったの」
「麻由子さんらしいです。でもまあ、肩の力を抜いて一緒に過ごせるのも、楽しいですけどね」
栗カボチャのポタージュをスプーンで掬っていると、麻由子が「あら」と声を上げた。
「ショウくん、好きな人できた?」
「なんですか、いきなり」
突然の切り返しに、ショウは戸惑ってスプーンをスープ皿の縁に当ててしまい、金属音が大きめに響いた。
「わ、すみません」
「いいのよう。で、相手はどんな人?」
にっこり笑った麻由子は、興味津々と言った体で身を乗り出してくる。
「目がハンターみたいで怖いですよ。そんな人いません」
「ハンター」
麻由子はけらけら笑い、シャンパンのグラスをくいっと空ける。
その時、ショウのスマホが着信を知らせ、ぶるぶると震えた。
「ちょっとすみません」
「どうぞ」
ポケットからスマホを取り出してLINEを開くと、マネージャーからで、この後にもう一件入れられるかとの打診だった。
『中嶋様から指名』という七文字にみぞおちの辺りがきゅっと痛んだ。ショウは手早く『延長の可能性あり。本日不可』と打ち込み、スマホの着信をサイレントに変えてポケットに仕舞った。
「顔色よくないけど、大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込む麻由子に、ショウは一つ微笑んで「大丈夫ですよ」と受け流し、「何か飲みますか?」とドリンクメニューをもらうべく、ホールスタッフに手を挙げた。
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