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第11話
「お風呂を沸かしておいたから、入って」
部屋に入るやいなや、彰人は事も無げに言った。
「六時間のカウントは今からでもいいし、お風呂を出てからでもどっちでもいい。それよりもそのままだと風邪を引いてしまうよ」
接客開始のLINEを送ってからスタートになる。今から六時間と数えると、入浴している分だけ彰人と過ごす時間が減ってしまう。台風で到着が遅れたという言い訳をすれば、少しくらいスタートが遅くなっても構わないかも知れない。ショウはそう思い、頷いた。
玄関を上がって廊下の左手にバスルームがあり、彰人について中に入ると真新しいバスタオルと着替えが用意されていた。
「貴重品とか、見られて困るものとかはこの袋の中に入れておいて。絶対に見ないし触らないから。それで、いま着ている服は洗うから、こっちのカゴに入れてね」
「ありがとうございます」
「ゆっくりあったまって」
にこっと笑って彰人はバスルームから出て行った。ショウはくしゃみを一つして身震いし、言われたとおり服を脱いでカゴに入れ、財布や端末等は示された袋に入れた。
バスにはお湯が張られていて、遠慮無く身体を沈める。どれほど自分の身体が冷えているのか思い知るほど、風呂は温かく、気持ちが良かった。
強ばっていた身体が解れて自然とため息が出る。
先週の日曜日の朝、この家を出てから一週間、彰人に会いたくて土曜の夜が来るのをずっと待っていた。だから悪天候ごときで断念することはしたくなかったし、こんな風に優しくされれば必要以上に舞い上がってしまう。
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