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第16話
「彰人さんは白がお好きなんですか?」
「そう。別々に買ってるんだけど気付いたら揃ってしまう。ショウくんは色白だから白が似合うね」
「そんなこと……」
――お前、色が白いから、
そのとき、唐突に中嶋の声が脳裏に蘇った。
――叩いた所が赤くなってすげえそそる。
そう言って身体のあちこちを痣ができるまで何回も殴られた。中嶋にとって、性処理と暴力はセットなのだと思う。暴力を振るうことで更に興奮するタイプだ。いかせて気持ちよくするサービスである上、両者を切り離せないなら仕方ないと理解しているけれど、気持ちは追いついていなかった。
「ショウくん」
名を呼ばれてふと我に返る。
彰人が心配そうにショウの顔を覗き込んでいた。
「……あ」
接客中に他の客のことを考えてぼんやりするなんて。その間に彰人は何か問いかけていたのかもしれない。ショウは彰人に向き直って微笑もうとした。
「すみません。もう一回言ってもらっても」
彰人はショウの手からコーヒーカップを取り上げて自分のカップと一緒にそっとテーブルに置き、「手が震えてる」と両手を包み込むようにした。
「顔色もよくない。大丈夫?」
そう言われて、心の中を見透かされたみたいで動揺し、胸がざわざわした。そんなことあるはずがないのに萎縮して咄嗟に言葉が出なかった。
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