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第18話
「グールドの、『二十七歳の記憶』っていうドキュメンタリー映画を見たことある?」
普段のフラットな精神状態を取り戻したくて却って見失い途方に暮れているショウは、彰人の問いに戸惑いながら首を横に振った。
「ないです」
「レコーディング風景とか、犬と散歩しているところとか、グールドの日常が切り取られている映画なんだけど、よかったら見てみない?」
膝が触れ合うくらいの距離でにこっと微笑まれ、雲間から光が差し込むように、つかえていた胸がすっと楽になった。
「見てみたいです」
「うん」
彰人は再び立ち上がったが、今度はショウへと手を差し伸べられた。
「すぐそこだけど」
照れたように笑う。
優しさと、自分の我が儘を許してもらえたことが嬉しくて、ショウはドキドキしながら素直にその手を取った。
二人は手を繋いでテレビの前へと移動した。
「スタインウェイのショールームにたくさん置いてあるピアノをね、グールドが次々に試して弾いて、自分の好みの音を探す場面があるんだけど、僕はそこが一番好きかな。この人の耳にはどんな風に聞こえてるんだろうって、すごく知りたくなる」
テレビの前に並んで座って、テレビ台の収納扉の中から探し当てたDVDのケースを取り出し、彰人は話した。
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