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第19話

 リモコンで間奏曲集のCDを停止し、トレイを開きディスクを交換する。その一連の動作をショウは彰人の身体にくっつきながら眺めていた。 「俺の想像ですけど、グレン・グールドって耳だけでなく目でも音を捉えてそうですよね。音に色がついて見えているのかも」 「ああ、そういうの面白いね」 「ほかにも、分からないですけど嗅覚とか触覚とか、おおよそ他の人とは違う方法で音の感じ方をしているんだろうなって思う時があります」  ショウが顔を上げると、柔らかく微笑んでいる彰人と目が合った。どきっとして恥ずかしくて、でも目を逸らすことができない。  この人のことが好きだな、と何度目かにまた思った。  接客している相手に恋をすることなんて無いと思っていたし、好きになったらだめだとも分かっていた。  彰人をじっと見つめているうちに苦しくなってきて、じわじわ目が潤んできたのを誤魔化すため笑ってみせた。 「ショウくんて、指名する人多いんだろうね」 「え」  唐突に予想外のことを言われ、目を丸くする。 「そんなことないと思います。普通ですよ」  本当のところはマネージャーしか把握していないが、そう答えた。店舗があるわけではないので、登録しているホストが何人居るのかも、誰にどの程度予約が入っているのかも、ショウは何も知らなかった。  肩に手を置かれ、すい、と自然に抱き寄せられて、自分の額が彰人の着ているシャツに触れた時、息を飲んだ。  背中を優しく撫でられ、自分の身体がおそろしく強ばっていることに気が付いた。彰人の体温を感じ、目が眩みそうになる。  テレビからはいつしか自動再生されたDVDの音声が鳴っていた。

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