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第20話

 ショウは、背中や後頭部を優しく撫でられながら、おずおずと手を彰人の背中に回した。彰人のことを抱きしめていいんだと思うと、知らずに手に力が入った。  背は高いけれど細くて華奢な印象だったが、思っていたより背筋がしなやかで、何度も確かめるように撫で擦る。自分の手つきがいやらしいかも知れず、でも止められなかった。  さっきからうるさいくらいの心臓の鼓動が、自分のものか彰人のものなのか分からなくて、息苦しくて、はあ、と熱い息を吐く。 「ショウくん、キスしてもいいですか」  なんで訊くんだろう、と訝しみ、あ、オプションか、と符合した。彰人が欲しくて、仕事だという意識がどこかへ飛んでいた。 「いいです」  キスしてもいいかなど、改めて問われると却って緊張する。自分の返事が上擦ってしまったのが恥ずかしい。そして、返事をしたくせに、どうしようと躊躇し顔を上げられないこともだめ過ぎた。初めてキスをする中学生じゃあるまいし、自分で自分が制御できない。  心臓の音はますます耳障りで、それどころか痛みを伴いどうにかなりそうで、自分を落ち着かせるために背中に回した腕で彰人の身体を強く抱きしめた。

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