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第21話

「ショウくん」  困ったような声が降って来て、ショウはふと我に返った。 「そんなにしがみつかれたら、何も出来ない」  続いて聞こえてきた笑い声に、ショウはかっと頭に血が上った。 「ご、ごめんなさい」  慌てて彰人の身体から手を放す。その機を逃さず、彰人の右手はショウの頬に添えられ、上を向かされた。左手は逃げられないようにしっかり腰を支えている。  二人の視線が絡む。彰人の眼差しは変わらず穏やかだった。 「本当はいや?」  やわらかく、優しい笑みを浮かべて尋ねてくる。  可愛らしい言葉は、残酷にショウの心を抉った。 「僕は、いやがることをしたくない。正直に言って欲しい」  あらぬ誤解をさせてしまったことに、ショックを受けていた。キスしてもいいと言ったのに顔を上げなかったことを拒絶と受け取られてしまったのだ。当然だった。 「違います、違います。俺は……」  ショウの仕事であるデリバリーホストは、要請されればどこへでも出向き、契約している時間の範囲内で依頼されたことを何でもこなす。デートでも性処理でも、必要なら家事でも力仕事でも。勿論できないこともある。法的に認められないことや技術的に請け負えないこともある。  それなのに、相手を好きになりすぎて、たかだかキスを躊躇うなどということはあってはいけないことだ。公私混同も甚だしかった。 「俺は、彰人さんが好きなんです。好きで、大好きで、大好き過ぎて、キスするの緊張しちゃって」

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