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第22話
驚いている彰人の視線が痛かったが、とにかく誤解をときたかった。告白などする気はなかったし、このことで更に嫌われてもう二度と会えなくなるにしても、拒絶したと思われたままなのは避けたかった。
結局は自分のことしか考えていないのだった。だが、この反省も後でいくらでもするので、今の望みは一つだけ、誤解をとくことだけだった。
「いやな思いをさせてごめんなさい。今日はずっと舞い上がってて、失礼なこともたくさんしてしまって、本当にごめんなさい」
「失礼なことなんて何もなかったよ」
彰人はやわらかい口調で、ショウの言葉を受け止めた。
「謝ることなんて一つもないよ」
「でも……」
言い募ろうとするショウを、彰人は目線で遮った。
「僕もショウくんが好きなんだ。だから本当はいやだと思ってるとしたら、キスするの可哀相だなって」
ショウは瞬きをして、彰人を見つめた。自分の耳が都合のいい解釈をしたのだろうか。
「ほんと、ですか?」
真意を探ろうと一心に見つめた先で、彰人は面映ゆそうに笑みを浮かべた。
「好きだよ」
彰人の言葉の意味を噛みしめる前に、言葉が耳に飛び込んだそばからショウの涙腺が緩んだ。薄い涙の膜のせいで視界が滲む。
「ショウくんが好き」
濡れた瞼に彰人の唇が触れた。
「……あ」
もう片方の瞼から、堪えきれなかった涙が流れて落ちる。
どうしようと怯える間もなく、瞼から頬へ優しいキスが落とされ、そしてショウの唇は甘く塞がれた。
だから、俺も大好き、と伝えたかったのに言葉を紡ぐことができなかった。
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