23 / 60

第23話

 チャラリラ、という軽薄な機械音が、狭いワンルームのアパート内に響き続けている。  いつものようにショウの部屋に転がり込んで、畳んだ布団の上で飽きもせずゲームに興じていたナツキは、「は?」と声を発して携帯ゲーム機を操作する手を止めた。  同時にそれまで流れていた音楽が異なる音色に変わったことで、ゲームオーバーになったことが知らされる。放り出されたゲーム機の画面は、コンティニューするかどうかを問うていた。 「あ、ごめん」  自分が余計な話をしたせいで、と謝れば、ナツキはまたしても「はあ?」と不機嫌な声を上げた。  「自分の気持ちに蓋をして仕事を続けるのきついよなあ」と、絵筆を動かしながら何の気なしに口にしたことが事の発端だった。最初の「は?」はその言葉に対して、後の「はあ?」はショウが「ごめん」と言ったことに対してだ。 「なんで今謝ったの」 「え、だってゲームが……。せっかくやってたのに」  ナツキは容赦なくゲーム機の電源を切った。それまで延々と流れていた音楽が突然鳴り止み、薄いアパートの壁越しに外を行きすぎる車の音や人の声が耳に飛び込んでくるようになった。 「ゲームなんてどうでもいいよ」  ナツキは苛立ちを隠そうともせずに、パンパンと自分の座る傍らを叩いた。ここに座れ、ということらしい。  壁にもたれ、立てた膝を画板代わりに絵を描いていたショウは、絵筆を水入れに入れて請われるままナツキのそばに移動した。 「ショウちゃんが土曜の夜を楽しみにしてるのは知ってるけど、今までそんなこと言ったことなかったよね。なんかあった?」

ともだちにシェアしよう!