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第25話
勿論ナツキの言葉を忘れたわけではない。だけどその日から毎週、もう既に六回会っていて、会った分だけどんどん好きになっていくのはどうしようもなかった。
「一応聞くけど、キスとかちゃんとオプション精算してるんだろうな」
「してるよ」
探るようなナツキの視線を避けるように、視線を落とした。比例するように声も小さくなる。
前回、彰人と初めてキスをした。
そして、帰りのオプション精算の段に少しだけ揉めた。
「ええと、オプションのキスっていうのは、キスした箇所によって単価が変わるの?」
「単価は同じで回数分を加算します」
「そしたら、今日のは何回になるんだろう」
彰人が真面目な顔をして、眼、頬、と思い出しながら数え始めたのでショウは真っ赤になって押しとどめた。
「あの、眼と頬のは一連で一回に数えます」
「そう? それじゃ、五回かな」
ショウは赤い顔で俯いたまま首を横に振った。
「だけどそのうち二回は俺の方からなので、ノーカウントで……」
「え、そういうルールなの? ほんとに?」
「三回分で大丈夫です」
「納得いかないです。ちゃんと払うからきちんと精算しましょう」
玄関先で繰り広げた、不毛とも言えるやり取りを思い出し、ショウは再び赤面した。結局はショウの言うとおり三回分で精算したのだが、渋々折れた彰人からカウントのルールが書かれた約款があるはずだから次回持って来て欲しいと言われたのだった。
「カウントしなかった?」
ナツキの冷水のごとき呟きは、ショウが赤面しながら作り出した綿菓子のようなふわふわした空気をぴきっと凍り付かせる力を持っていた。ショウは思わず肩を竦める。
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