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第30話

   2  とにかく調査物が多すぎて本来業務に支障を来すし、いきなり明日の十五時までに回答してほしいなどと言われても困ります、県は県下の市町村に照会しなければならないしそれをとりまとめるのにも時間が必要なんです、という内容を慇懃無礼にまわりくどく訴えられ、どうにか電話を切ったところだった。一息吐く間もなく、「大澤係長」と声をかけられる。 「二番に本省の方からお電話です」 「はい」  机の上に置いているミニボトルに入ったアイスティーを急いで一口飲み、左手で受話器を取った。 「お待たせしました、大澤です」 「政策課の斉藤です。おつかれさまです。開明党の三好先生から質問が来た件で先日資料を出していただいたんですが、データの時点をもう少し新しく出来ますか」  彰人は該当のメールを探して添付ファイルを開き、別のウィンドウを開いて都県政令市から調査回答として提出された生のデータをざっくりと確認した。 「自治体によっては今年の六月時点の数字を後から出してきているところもあるんですが、すべてではないので足並みは揃わないですね。今お送りしている年度末時点では古いということですよね」 「少しでも最新のデータが欲しいということなんですよ」 「そうですか。新たに自治体に至急の調査依頼をするのも、最近立て続けですからね。できれば有り物で対応したいところなんですよね……」  つい先ほど調査物が多すぎると苦言を呈されたばかりだからというわけでもないが、水際で食い止められそうなものは調整をしたかった。議会が最優先なのは変わらないが無駄なものは極力省いて効率的に業務を行う方がよいし、最近はそういう風潮だ。

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