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第31話

「まあ確かにね、数値を三ヶ月更新するための労を考えるとね」 「ああ、でもちょうど明日締切の調査回答である程度カバーできそうなので、先生に二日待っていただけるか御確認いただくことはできますか。それとは別に念のためにこちらも他の手持ちのデータで代用できるものがあるか調べておきますので。手持ちのデータの方は見つけ次第すぐにお送りします」  よろしくお願いします、と電話を終えたところでちょうど正午を知らせるチャイムが鳴った。この電話の間に、都と政令市から電話が欲しい旨のメモが入っており、新着受信メールは三十件を超えていた。  彰人はため息をついて再びアイスティーを口にする。  昼休みだからといって食事をしなくなったのはいつからだろう。多くの職員は仕出しや手製の弁当を食べたり、連れ立ってランチに行くようだが、彰人は大抵職場で午後の準備をしたりメールチェックをしたりして過ごしていた。本当はきちんと休憩をとるべきなのだが、お腹もすかないしとてもそんな気にはなれなかった。寧ろ昼休みは電話が少なくて集中できる。  彰人の職場は国土交通省の地方支分部局の一つで、本省と関東地方管内の自治体とのパイプ役を担い、都市計画や補助事業の管理が主な業務だった。そして毎年この時期は補助金の完了検査で特に出張が多く、どうしても通常業務が滞ってしまうため超過勤務時間が増えてしまう。

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