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第37話

「こっちは寒いんですね」  同じ部屋なのに体感的に二度くらいは温度が低そうなことに首を傾げつつ後ろから腰に手を回して抱きつくと、手の上に大きな掌が重ねられ「もうすぐ出来るから」と宥められた。この日は前日と比べると急激に気温が下がり、日中でも十二月半ばの最高気温と天気予報で言われる程だった。  話しているそばから電子レンジの無機質な音が鳴る。 「ほらほら、熱いの触るから手を離して」  子供に言い聞かせるみたいに言われて、ショウは素直に従った。  彰人は湯気の立っている耐熱ボールを電子レンジから取り出して、茶こしを使って手際よくロイヤルミルクティーを淹れた。マグカップ二つをシナモンパウダーと共にトレイに乗せる。  ショウは彰人の後ろから覗き込んで感嘆の声を上げた。 「美味しそう。いい匂い」 「お待たせ。行くよ」  キッチンの電気を消して自分の後を追ってくるショウを途中で振り返り、彰人は堪えきれずに笑い声を立てた。 「なに? なに?」 「なんでもないよ」 「嘘だあ」  テーブルにトレイを置く彰人を回り込むようにして、ショウはソファに戻ると綿毛布にくるまった。 「こっちはあったかいですね。不思議」 「そこの壁が遮っているのかもね」

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