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第40話
「ショウくん自身のことって、あんまり聞いたらいけないのかな」
遠慮がちに、言いづらそうに彰人は尋ね、でも、口調とは反対に目は熱っぽくショウを見つめていた。
「言えることとだめなことがあるんですよ」
冗談めかして返せば「じゃあ、答えられる範囲で教えて」といつになく食い下がられた。
「ショウくんは二十歳って言ってたけど、学生さん?」
少し逡巡し、なんと答えようか言葉を探していると、言えないことと判断したのか彰人は質問を変えた。
「誕生日はいつ?」
「一月七日です」
「この仕事はいつからしているの?」
本当は去年からだが、言ってよいものか分からなかった。
「こういうのは聞いたらだめか。じゃあ、兄弟はいる?」
「居ないです」
彰人と同じ、一人っ子だ。そう伝えようかと思っていると次の質問が飛んできた。
「キスしてもいい?」
ショウは不意をつかれ、彰人を見つめたまま、呼吸を忘れた。
次の瞬間、一気に頬が上気し体温が上がるのが分かった。先週もそうだったが、尋ねられるのは心臓によくない。オプションの確認であってもだ。
「……いいです」
ドキドキしているショウの手からマグカップが取り去られ、彰人のカップと共にテーブルの上に置かれた。
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