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第44話
「遠慮してます?」
「そうじゃなくて」
よく見れば先ほどまでとは違って悲しそうに瞳は翳り、長い睫毛が頬に影を落としていた。
ソファの上に押し倒された体勢のまま、ショウは首を傾げ、濡れたように光る眼を見上げて次の言葉を待ったが彰人は口を開いてはくれなかった。
「ごめんなさい、俺、なにか嫌な事言ったんですね」
彰人は無言で首を横に振ると、つないだままの手に再びキスをした。
「ちょっとやきもち」
「え、今の流れのどこにですか?」
ショウの目の前で、手の甲に優しく唇を押し当てる。ただ触れるだけ、場所を変えて何度も口づけるだけの仕草に、再びショウの熱は上昇していった。考えすぎかもしれないけれど、キスされるたびに好きだと告白されているようで照れてしまって正視できない。
「あの、もう……」
汗ばんでしまった手が恥ずかしく、でも、つながれた手はほどけない。
これからのこともあるので、理由を教えて欲しいとねだったが、少し唸った後に、「僕が悪い、ごめん」としか言ってもらえなかった。
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