45 / 60

第45話

「今の時間だけでいいから、僕の恋人でいてくれないかな」  仰向けに横たわるショウを熱っぽい眼で見下ろしてそんなことを言う。 「勝手なこと言って、心が狭くてごめん」  ナツキが言っていた。好きな相手が、仕事とはいえ自分以外の人に身体を触らせたり、オプションでキスやフェラチオをすることを許容できる恋愛はあり得るかと。  ショウが不用意に「俺うまいですよ」などと言ったから、そのことで彰人が妬いている、とか。まさか。  さすがにそれは自分に都合のよすぎる解釈だから違うとしても、一端の社会人でもある大人の男性が、自分より年下の、行きずりのような者に、痛みを堪えるような顔を見せるから、ショウは安心させるように微笑んで、つないでいない方の手を伸ばして彰人の肩を優しく撫でた。 「彰人さん、俺、恋人でも、オトくんの代わりのペットの振りでも、なんでもします」  その言葉に彰人は一瞬泣きそうな顔をして、表情を隠すようにショウの胸に頭を乗せうつ伏せた。優しく優しく彰人の頭を撫でているうちに、相手が年上だというのに何故か庇護欲をかき立てられたショウは、自分がこんな感情を持つことができるのかと発見する思いだった。  彰人を守りたい。優しくしたい。いつまでも抱きしめていたい。 「大好きです」  客に本気になるな、というナツキの声が蘇る。でも、後で自分が傷つくだけだと分かっていても気持ちを止めることは出来なかった。  ショウは切なくて泣きたくなった。

ともだちにシェアしよう!