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第53話
今日の彰人は質問が多い。だが、ショウはちっとも不快ではなかった。それどころか自分に興味を持ってくれているのだと嬉しくすらあった。
それと、ありきたり過ぎて認めることも抵抗があるが、彰人との距離感が確実に変化した。少なくとも自分の方は。だからいつもなら人に話さないようなことも、素直に口にした。
「上京してすぐ、偶然出会った人がマネージャーで、こういう仕事してるんだけどやってみない? って。なんにも決めずにただ東京に来ただけだったから渡りに船というか」
住むところも決めていなかったので今のアパートもマネージャーに紹介してもらい、保証人になってもらった。
「さっき答えなかった質問の答えにもなってしまうんですけど、俺、デザイン系の専門学校に行きたいんです。入学金と学費と機材と、入学した後どのくらいバイトが出来るか分からないからその生活費と、もしかしたら専攻を変えたりして二年で卒業しないかもしれないし、とか色々考えて、とにかくお金を稼がないと、って」
「デザインって、広告とか? それとも服飾やインテリア?」
「広告とかWebとかです。今のところ」
勉強しているうちに変わるかもしれないから、と付け足した。
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