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第57話
キスはオプションだから先に確認を取る意味合いも込めて、キスをしてもよいか事前に告げたのだが、その時の反応が可愛すぎて最近は意図が変わってきている自覚がある。
尋ねた途端にぶわっと頬を染め、時には耳まで赤くなり、羞恥に眼は潤み、俯いてしまったりする。この初心な反応が衝撃的に過ぎた。
最初にキスをした時など、ぎゅうぎゅう抱きしめてきてずっと俯いたままだったので、てっきりいやなのかと思っていたら、恥ずかしくて顔を上げられなかったなどと言う。
さすがにそんなはずはないと思っていたが、そのあと必死に弁明する様子に半ば絆され、また、あれから今に至るまでさして反応が変わらないところを踏まえても、真実だったのかも、と認識を新たにしていた。
だけど、と思ってしまう。はまればはまるほどショウが仕事で自分と会っているだけなのだという事実に苛まれる。
本当は考えたくないことだけれど、自分のようなショウの客はきっと何人も居る。そして彰人と同じように魅了されているのだと思う。
もしかしたら客一人ひとりに別の顔を使い分けて相対しているかもしれない。
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