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第58話

 最初のうちは距離感がちょうどよかった。  空虚な週末の夜を埋めてくれる相手は、自分のことを全く知らない通りすがりの誰かでよかった。  だけど、ショウのことは初めから気に入って、一度だけでは飽き足らず何度も指名しているうちに大切に思うようになっていった。  そうなってしまえば、どうしても独占欲が頭をもたげてくる。  「口でしてあげる。俺、うまいですよ?」と、ショウがほんの少し自分以外の人との関係を言外に示しただけで気持ちが塞がるくらいには、特別な存在になりたいと考えている自分に気が付いてしまった。  「今の時間だけでいいから、僕の恋人でいてくれないかな」などと甘ったれたことをつい洩らしてしまったが、今だけでいいから、は完全に嘘だった。  その他大勢のうちの一人であるくせに、思い上がりも甚だしいと思う。

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