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第3話

「紀伊さん一ヶ月ありがとうございました!」  オートクチュール専攻の斎藤さんがフワッと真っ白いマフラーを巻いてをくれた。自分で編んだのだそうだ。刺繍も入っていて凝ってるし、可愛い。カラコン入ってるし、僕より背が高いし、見た目怖いくらいにビジュアル系なのにすっごくシャイで素直でいい子だったな。 「ありがとう。手伝ってくれて本当に助かりました。これからも頑張ってね。気が向いたら遊びにきて。これは僕から」  彼女の髪に赤い薔薇のコサージュをつけた。よく似合ってる。 「ありがとうございますーー!! 絶対来ます! すごく勉強になりました! あと紀伊さんのご飯すっごく美味しかったです!」  涙ぐみながら、ぎゅうぎゅうハグしてくる。嬉しいな。みんな頑張って自分の夢を叶えてほしい。実習終了まであと一週間。最終日はそれぞれ違うから今週はさよならラッシュだ。今年もみんな良い子だった。勝手に子どものように思って応援してるよ。 「寂しくなるねーー」  彼女が帰っても黙々と作業をしている兼子君に話しかけた。彼は最終日まで来てくれるらしいから最後に見送るのは兼子君になる。 「まだまだ個展まで忙しいんじゃないですか?」 「ああ、まあそうだね。でもみんなのおかげでだいぶ貯金は溜まったよ。ほんと僕の方が感謝だよ」 「あの……良かったら個展まで手伝わせてくれませんか?」 「……ありがとう。気持ちは嬉しいけど、さすがにもう学校に戻らなきゃダメだよ」  兼子君は丸々一ヶ月通ってきてくれてる。出席日数は大丈夫だとしてもさすがに本来の勉強に戻らないと……それに長くなるほど僕が辛くなりそうだからね。 「そうですね」 「卒業したら遊びにきてよ」 「はい」  何か言いたげな表情。ここが気に入ってくれたみたいで嬉しいけど学校に戻れば学業に忙殺されてすぐに忘れられてしまうだろう。卒業したとしてもすぐに就職だ。たぶんもうここにくることはないだろうな……。  でもきっと活躍するだろう姿を遠くから見るのを楽しみにしてるよ。

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