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第6話(4)
莉音先輩と学食に行っても、やっぱり先輩は普通サイズのうどんをちゅるっと一応すするだけで、全然食は進んでいなかった。
「あ……」
たまたま目の端に大和先輩が目に入って俺はコップを中途半端なところで止めたまま動けなくなる。
「ん?」
それに気付いた莉音先輩も振り返って苦しそうに顔を歪めたのを見て、俺はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。
腕を組んで歩く2人はどう見てもカップル。
大和先輩を見上げる茶髪で緩いウェーブの女性はかなりの笑顔だ。
「莉音先輩?大丈夫ですか?」
声をかけると、先輩は眉を歪めたまま少しだけ笑う。
あんないつも一緒に居て笑っていた先輩たちが今、目も合わせなかった。
見ていられなくて視線を移すと、外のテラスを創介が歩いているのが見える。
その腕にも創介と同じくらいの明るい茶髪の女。
「あいつ、また……」
「なぁ、雄吾。お前って……」
舌打ちをすると、先輩は箸を置いて机に頬杖を付いた。
「な……何ですか?」
あまりにもじっと見られて声が上擦る。
何か……色々見透かされているようでドキドキした。
「創介のこと好き?」
「は?そりゃ、一緒に住むくらいなんで嫌いではないですけど、あいつは幼なじみで俺はノーマル……」
答えつつ、莉音先輩の目からは逃れられなくて心臓は更に大きな音を立てる。
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