59 / 203

第9話(6)

 嬉しくて閉じた目を開けると、創介はちょっと呆れたように笑う。 「で?付き合ってくれんの?」 「……初彼氏?」  ちょっと戸惑いつつ創介を見ると、創介はにこにこと嬉しそうに顔を綻ばせた。 「いいな。その響き」  幸せそうなその顔を見て、俺も嬉しくなる。  でも、腰を引き寄せてきたその手から逃れると、創介はちょっとムッとした。 「あんまくっつくのは止めよ」 「は?付き合うのに?」 「付き合うからだろ。学校では今まで通り幼なじみで親友!そのボロを出さないように普段から線は引いときたい」  どう見ても納得していない創介の顔。 「お前、気持ち良くして欲しいくせに?」  ちょっとウッと唸る。決意が揺らぎそうになった。 「そりゃ、たまには……でも、男同士じゃん!わざわざカミングアウトする必要ねぇだろ?お前いっつも女の子連れてたし、おもしろおかしく突っかかってくる奴とか居そうじゃん」 「そんなの関係な……」 「くねぇから!お前はイケメンで何でもスマートにこなすカッコいい奴なんだよ!悪く言われるのは俺が嫌だ!」  遮って言うと、今度は創介が唸る。  だって……付き合うってそんな軽いことじゃないだろ?

ともだちにシェアしよう!