62 / 203
第10話「うわぁ……」
次の日、朝、創介と一緒にアパートを出る。
今までのように大学まで自転車に乗りながら創介を見てちょっとくすぐったい気がした。
自転車を停めてエスカレーターに乗ると、
「雄吾!創介!はよ!」
後ろから声をかけられて振り返る。
そこには微笑んでいる莉音先輩が居て、俺も自分が笑顔になるのがわかった。
「一緒に居るってことは……だな。よかった。安心したわ」
にこにこと笑う莉音先輩を見て嬉しい反面……やはり隣には姿のない大和先輩が気になる。
「先輩のお陰ですよ」
ちょっとクールに、でも、ちゃんとお礼を言う創介を横目で見ながら辺りを探してしまった。
「雄吾。大和は一緒じゃないよ」
「え……そんな……」
気の利いた言葉が浮かばなくて創介を見ると創介は特に何でもない顔をして前を向く。
「莉音先輩、バイトない日ってありますか?先輩のお陰なんで奢りますよ。な?雄吾」
冷たい奴……と思っていたら、創介は振り返ってこっちに笑いかけてきた。
「うん!」
「いや、俺、何もしてないし。後輩に奢ってもらうとか悪過ぎる」
やっぱ、創介、頼りになる!ってコロっと考えを変えるが、莉音先輩はかなり遠慮する。
「こいつ、莉音先輩ダシにしないと俺とデートもしないんですよ」
莉音先輩はきょとんとしてから笑ってるけど……創介!何言ってんだっ!!
ともだちにシェアしよう!