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第11話(5)

「んじゃ!俺、模擬店の方の準備見てくるから!そっち頼んだぞ!」  笑って走っていく竹先輩の後ろ姿を見ながら首を傾げる。 「……え?何すんの?」 「やっぱり聞いてなかったな」  デコピンをされてヒリヒリするおでこを押さえると、創介はフッと笑った。 「ミニシアター取ってあるから上映準備」  創介に説明されて歩きながら竹先輩の話を全く聞いていなかったことをちょっと反省する。 「上映準備って何すんの?」 「お前……一切聞いてなかったんじゃねぇか」  ため息を吐いた創介はじっと俺を見てからすぐ側の教室のドアに手をかけて俺も一緒に引っ張り込んだ。 「え?」  引き戸が閉まり切る前にすぐ側の壁に押さえ付けられて俺はちょっと慌てる。  誰か通ったらどうすんだ!ってか、準備任されたんじゃねぇのかよっ!!  「こっちは気ぃ張ってんのにボケっとしてんなよ」  急にちょっとイラついた創介の顔が目の前にあって俺の心臓はバクバクと音を立て始めた。 「は?」 「普段から線を引いときたいっつったくせして普通に肩組んで来るし、キスだけで堪えてんのに何か煽ってきやがるし、気抜いてかわいく笑ってんじゃねぇよ!」 「はぁ!?」  俺の声が裏返る。  もしかして……創介もずっと我慢してた?

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