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第13話(8)

 帰り道、莉音先輩と大和先輩の話をしながら気を逸して歩いた。  だいぶ慣れたもののやっぱり異物感は消える訳ではない。キュッと力が入っても声は出さないようになったが、歩いていると呼吸は少し乱れてきた。  すれ違うそこら辺の人に気づかれているようで怖い。バレて笑われている気がして気が気じゃなかった。  創介が鍵を開けてドアを開けたのを見て、転がり込むように家に入る。 「も……無理っ……」  やっと家に着いた安堵からか玄関で横になって潤んでくる涙を堪えていると、創介は笑いながら俺のスニーカーを脱がせてくれた。 「ここでは抜けねぇから上まであと少し頑張れ」 「鬼っ!!」  頭だけ持ち上げて叫ぶと、創介はニヤリと笑う。 「それがお望みならばそうするけど?」  その余裕の笑みを見た瞬間、背筋がゾクッとした。  ゆっくりと起き上がって階段の手摺りに体重をかけながらのろのろと気をつけて上る。  なのに、1番上に近づいた頃に、尻を撫でられて 「んぁっ!!」  俺はビクッと身体を跳ねさせて創介を睨んだ。 「何すんだよ!」 「お前が目の前で尻振ってるから」  必死に上ってるだけなのに……くそっ!! 「もう早く抜けっ!!」  怒鳴ると、創介はくすくすと笑った。

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