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第16話(5)
バイトを終えて帰ると創介は風呂から出たところだったようで、階段の上でしゃがんで
「お帰り」
笑っているのを見上げた俺はちょっとキュンとなった胸を押さえつつ階段を上った。
そのまま1番上に座って足を開いて両腕を伸ばした創介の首に腕を回して抱きつく。
「ただいま」
言いながら少し腕を緩めるとすぐに唇を押し当てられてチュッチュッと何度も角度を変えるだけの軽いキスを交わした。
そんな少しだけのキスではもどかしくなるけど、腰にしっかりと回されている腕が嬉しくて俺もギュッと腕に力を込める。
「寒かっただろ?今日はビーフシチューだけど?」
「食う!めっちゃいい匂いしてて更に腹減った!」
笑いながらくっついて何となく離れがたくてそのまま一緒に立ち上がった。
さっきまで上からは見ていた創介の顔もたった2cmの身長差だからお互いに立てば目線はほぼ一緒になる。
甘い視線を絡め合って今度は少し口を開くと創介は軽く舌に触れるだけで離れた。
「創介?」
「こんな狭いところでお前の腰が抜けたら危ねぇだろ?早く飯食ってゆっくり……な?」
リビングのドアを開ける創介を見て恥ずかしくなる。
「手、洗ってくる!」
反対のドアを開けて洗面台の前に立つと、俺は赤い顔にバシャバシャと水をかけた。
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