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第17話(6)
「気にすんな。大丈夫だよ」
すぐにまた歩き出す創介は違和感しかない。
いつもなら酔っている俺の手を引いてくれるのにポケットからその手は出て来ないし、そもそもさっきから全然笑わない。
アパートに着いて玄関の鍵を開ける創介の後ろ姿を見ながら眉を寄せていた俺は創介に続いて家に入ると、勢いよくその襟元を掴んだ。
「何だよ!何かあったならちゃんと言え!」
思いっきり掴んだからか壁に背中をぶつけて創介が軽く呻く。でも、顔はこっちを向かなくて俺はそっと手を離した。
「……女の方がよくなった?」
「はぁ?」
呟くと創介の低い声が聞こえる。
「俺とだと外で手も繋げねぇもんな。抱きついてキスなんてできねぇしなっ!」
言いながら靴を脱ぎ捨てて階段を駆け上がった。まだわずかに残った酒で何度も足をぶつけたけど止まらずにそのまま部屋まで走る。
飲み会で見たあの幸せそうにイチャつくカップルを思い出してベッドに倒れ込んだ。
俺と創介は男同士であんなみんなに冷やかされることはない。むしろ、指を絡めて握るだけで大騒ぎだろう。
ヤイヤイ言われながらはにかんで笑うあいつらみたいにはできないんだ。
「バカ野郎……」
止まらない涙を流しながらグッと歯を食い縛った。
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